システム開発の「適正価格」はどう決まる?見積もりを取る前に予算の目安をつくる4ステップ
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「この金額は妥当なのか、まったく判断がつかない」。開発を発注する経営者や担当者から、最もよく聞く悩みです。
実は、システム開発に「定価」はありません。同じ「予約管理システム」でも、ある比較サイトの相場は80万〜500万円と6倍以上の幅があります。だからこそ、見積もりを受け取ってから悩むのではなく、依頼する前に自社なりの「適正価格の幅」を持っておくことが大切です。
この記事では、技術がわからなくてもできる、予算の目安のつくり方を解説します。
なぜ発注者には適正価格がわからないのか
理由は主に3つあります。
- 中身が見えない:家やクルマと違い、ソフトウェアは完成するまで形がありません。何にどれだけ手間がかかるのか、外からは判断できません。
- 比べる対象がない:多くの企業にとって、システム開発の発注は数年に一度です。過去の経験から相場観を持つことが難しいのです。
- 「同じもの」の定義が人によって違う:発注者が「予約システム」と言っても、会員管理や決済、外部連携の有無で作業量は何倍にも変わります。
つまり、適正価格がわからないのは発注者の知識不足ではなく、ソフトウェアという商品の性質によるものです。だからこそ、考え方の「物差し」を持つことが役に立ちます。
開発費を決める3つの要素
受託開発の価格は、おおむね次の式で決まります。
開発費 = 工数(どれだけの作業か) × 単価(誰が作業するか) + リスクへの備え
1. 工数:どれだけの作業が必要か
工数とは、作業にかかる量のことです。開発では「人月(にんげつ)」という単位がよく使われます。1人月は、エンジニア1人が1ヶ月働く作業量です。
例えば「3人で4ヶ月」かかる開発は12人月です。工数は、機能の数や複雑さ、外部システムとの連携、求められる品質によって増減します。
2. 単価:誰が作業するか
人月単価とは、エンジニア1人を1ヶ月動かすのにかかる費用です。開発会社の比較サイトでは、次のような目安が紹介されています。
| 役割 | 人月単価の目安 |
|---|---|
| プログラマー(下請け・フリーランス) | 40万〜80万円 |
| プログラマー(大手企業) | 60万〜100万円 |
| システムエンジニア(初級) | 80万〜100万円 |
| システムエンジニア(中級) | 100万〜120万円 |
| システムエンジニア(上級) | 120万〜200万円 |
出典:発注ナビ:Webシステム開発の費用相場(2026年5月)
同じく発注ナビの別記事では、首都圏の中堅エンジニアが月100万円程度、地方では60万〜70万円程度という地域差も紹介されています。
ただし、筆者がこれまで見てきた現場では、これらの目安を上回る単価で働くエンジニアも珍しくありません。(上記より、20%上回るケースが多いです。) 相場表の数字だけを見て「高すぎる」と判断しないようにしましょう。
ここで覚えておきたいのは、単価が安いことと、総額が安いことは別だという点です。経験の浅い人が3ヶ月かける作業を、経験者が1ヶ月で終えることもあります。
3. リスクへの備え
見積もりには、仕様変更や想定外の問題に備えた「バッファ(予備の工数)」が含まれます。要件があいまいなほど、開発会社はリスクを大きく見積もります。
裏を返せば、発注者が要件をはっきりさせるほど、リスク分の上乗せは小さくなります。価格を下げる最も確実な方法は、値引き交渉ではなく、何を作るかを明確にすることです。
予算の目安を自分でつくる4ステップ
ステップ1:上限を決める(いくらまでなら払う価値があるか)
まず考えたいのは「相場はいくらか」ではなく「いくらまでなら投資する価値があるか」です。これが予算の上限になります。
計算例(仮の数字です)
- 社員5人が、毎日1時間ずつ手作業で集計している
- 月20営業日として、月100時間
- 人件費を1時間あたり3,000円とすると、月30万円、年360万円
この作業がシステムでほぼなくなるなら、3年で回収すると考えて上限は約1,000万円です。ただし後述する保守費用も差し引く必要があります。
売上を増やすためのシステムなら「増える粗利」で、リスクを減らすためのシステムなら「防げる損失」で同じように考えます。上限を超える見積もりしか出てこないなら、作るものを絞るか、そもそも開発しない判断もありえます。
ステップ2:下限を知る(相場と工数から逆算する)
次に、相場から「これより安いのは不自然」という下限の感覚を持ちます。
| システムの種類 | 費用相場 |
|---|---|
| コーポレートサイト | 20万〜300万円 |
| ECサイト | 60万〜400万円 |
| 予約管理サイト | 80万〜500万円 |
| マッチングサイト | 100万〜500万円 |
出典:発注ナビ:Webシステム開発の費用相場(2026年5月)
ただし、こうした相場の幅は非常に広く、自社の業務に合わせた業務システムはこの表に当てはまらないことも多いです。そこで人月からも逆算します。
例えば、開発会社との打ち合わせで「3人で3ヶ月くらい」という感触が得られたら9人月です。人月単価を80万〜120万円とすると、720万〜1,080万円が一つの目安になります。
ステップ3:総保有コストで考える
総保有コスト(TCO)とは、作るときだけでなく、使い続ける期間全体でかかる費用の合計です。開発費だけを比べると、判断を誤ります。
- 初期開発費:見積もりの金額
- 保守・運用費:不具合対応やOS・ライブラリの更新など。開発費全体の10%前後で見積もられることが多いとされます(お名前.com)
- クラウド・サーバー費用:利用量に応じて毎月かかる
- 社内の工数:要件の打ち合わせ、テストへの参加、操作の教育など
初期費用が安くても、設計が悪いとクラウド費用や保守費が膨らむことがあります。逆に、設計を見直すことで運用コストが大きく下がるケースもあります。
ステップ4:小さく始めて、価格を確かめる
最初から全体を一括で発注すると、見積もりの精度が低いまま大きな金額を約束することになります。
おすすめは段階発注です。まず要件定義(何を作るかを決める工程)だけを発注し、その成果をもとに本開発の見積もりを取ります。要件が固まっていれば、複数社の見積もりも同じ条件で比べやすくなります。
さらに、MVP(最小限の機能で動く製品)から始めれば、使ってみて本当に必要な機能だけに追加投資できます。
「安い・高い」の判断でよくある失敗
- 最安値の会社を選ぶ:安さの理由が「作業範囲が狭い」「テストが少ない」ことだと、追加費用で結局高くつきます。
- 総額だけを比べる:A社は保守込み、B社は保守別、という比較では意味がありません。条件をそろえて比べます。
- 値引き交渉で範囲を削られる:「100万円引きます」の裏で、ドキュメントやテストが減っていないか確認が必要です。
- 相場記事の「平均」を鵜呑みにする:平均は様々な規模の案件の混ざった数字です。自社の案件に当てはまるとは限りません。
- 「高いから安心」と考える:大手だから品質が高いとは限りません。実際に誰が担当するかを確認しましょう。
外部の専門家に相談すべきタイミング
ここまでのステップは、自社だけでも進められます。ただし、次のような状況では限界があります。
- 工数の見積もりそのものが妥当か判断できない(「3人で3ヶ月」が正しいかわからない)
- 複数社の見積もりの差が2倍以上あり、理由が説明されていない
- 数百万円以上の投資で、失敗したときの影響が大きい
- 既存システムの置き換えで、移行の難しさが読めない(いわゆる「2025年の崖」の問題)
- 長年同じSIerに任せていて、比較のしようがない
一方、数十万円規模のウェブサイト制作や、パッケージ製品の導入のように比較しやすい案件なら、外部の専門家は不要なことも多いです。相談費用が見直しで浮く金額を上回るなら、この記事のステップを自分で試すだけで十分です。
まとめ:適正価格は「上限」と「下限」の間にある
- 上限は「いくらまでなら投資する価値があるか」で決まる
- 下限は「工数 × 単価」と相場から逆算する
- 比べるのは初期費用ではなく、使い続ける期間全体の費用
- 要件を明確にすることが、最も確実に価格を下げる方法
- 段階発注で、見積もりの精度を上げてから大きな投資を決める
見積もり・開発計画を第三者の目で確かめたい方へ
相談先には、知り合いのエンジニア、フリーランスの技術者、技術顧問サービスなどの選択肢があります。TechMO合同会社もその一つとして、開発会社の見積もり・提案書のセカンドオピニオンや、開発計画の相談を受けています。
当社は受託開発も行っていますが、技術顧問としてのレビューは開発の売り込みを目的としません。他社ベンダーの提案も、発注する側の立場から公平に評価します。設計の見直しで運用コストが下がることもあり、当社が支援した物流系スタートアップでは、在庫管理システムのインフラコストを40%削減しました。
「この金額で発注してよいのか判断がつかない」という方は、見積もり・提案書の無料セカンドオピニオン、または開発計画の無料相談を申し込むことから始めてみてください。